γ-GTP
γ-GTPは、肝臓や胆道にある酵素です。アルコールの影響が最も現れやすい数値として知られています。飲酒を続けると肝臓が処理のための酵素を増やすため、飲酒量に応じて上がります。控えると比較的早く下がり始めるので、生活改善の効果を確認しやすい指標です。一方、お酒を飲まない方でも、胆道の流れが滞っている場合や脂肪肝、一部の薬の影響で高くなることがあります。
疾患との関連
GOT(AST)、GPT(ALT)の高値は肝細胞の障害を示し、γ-GTPの高値は胆道系への負荷や肝臓の代謝への負荷がかかっていることを示します。GOT(AST)、GPT(ALT)の上昇で最も多いのは脂肪肝ですが、アレルギー反応、薬剤の影響、ウイルス肝炎などが原因となる場合もあります。消化器内科の専門診療への受診をお願いします。γ-GTPの上昇に強く関連するのは飲酒量の増加ですが、それ以外に肝臓への負荷が継続することでも上昇します。これらの異常は将来的に肝機能低下を起こし、肝臓がんや浮腫、食道静脈瘤などの生命に関わる状態に進行する可能性があります。脂肪肝が疑われる場合には、適切な体重の維持や飲酒制限など、生活習慣の見直しが必要になります。
望ましい生活習慣
肥満が脂肪肝に強く関連しており、また飲酒の増加も関連します。BMIを25以下にする体重管理が重要です。運動による消費カロリーが食事による摂取カロリーを超えるよう、運動も食事も自身が継続できることを選択することが重要です。運動としては1日30分以上毎日(少なくとも週3回以上)、有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、サイクリングなど)が勧められます。食事としてはカロリーの適正化(標準体重×25kcal)と適切なPFCバラ ンス(炭水化物50-65%、タンパク質13-20%、脂質20-33%)が薦められます。飲酒に関してはアルコール25 g/日以下[ビールで大瓶1 本(633 mL)、日本酒で1 合強、ワインで 250 mL 程度まで]、あるいはできるだけ減らすのが重要で、休肝日の設定が必要です。
増田大作 Daisaku Masuda, MD, PhD 地方独立行政法人りんくう総合医療センター 循環器内科 部長 兼 先進医療開発センター センター長
コラム
肝臓は体内で最も大きな臓器で、代謝・解毒・栄養の貯蔵・胆汁の分泌など500以上の重要な役割を果たしているそうです。ですから肝臓の機能が障害されると、代謝や解毒の能力が低下し、全身に様々な影響が出ます。
ところがそうした障害は、なかなか自覚症状が現れにくいのが特徴で、ですから「沈黙の臓器」などというおそろしげな名前で呼ばれています。早期にはほとんど症状がなく、ある程度進行してからだるさ、食欲低下、黄疸、むくみなどが現れます。それが進行すると、いよいよ本当に恐ろしい肝硬変や肝臓がんにつながることもあるので、日ごろから血液検査や画像診断(エコー・CT・MRI)による定期チェックが重要となります。
ちなみに多くの人が診断されている「脂肪肝」は肝機能障害そのものではありませんが、その一因とされています。「日本消化器病学会・日本肝臓病学会 NAFLD/NASH診療ガイドライン2020」によると、男性で3人に1人、女性で5?6人に1人は脂肪肝だそうで、私もその一人です。3人に1人もいるなら病気じゃないじゃないかと屁理屈をいいたくもなりますが、肝機能障害の予備軍ということなので、やはり注意が必要です。
肝機能障害は、血液検査で肝機能の指標となるAST (Aspartate Aminotransferase,アスパラギン酸アミノ基転移酵素、旧称GOT、以下こういう専門用語が続きますが、説明は省略します)、ALT(GPT)、γ-GTPなどの値が基準を超えた状態を指します。主な原因としていわれているのは、ウイルス性肝炎(B型・C型肝炎ウイルス)、アルコール多飲、薬剤性(薬による副作用)、肥満や糖尿病に関連する非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、自己免疫異常、そしてまれに遺伝性疾患もあります。
脂肪肝の一卵性双生児相関は0.70、二卵性は0.36。線維化については一卵性0.48、二卵性0.12、ALTでは一卵性0.64、二卵性0.42と、いずれも一卵性双生児が二卵性双生児よりも類似性が高いことから遺伝の影響は無視できません。双生児相関から算出される遺伝率推定値は、肝脂肪(脂肪肝)で0.52、肝線維化で0.50、ALTレベルで0.55?0.65前後と推定されています(Choudhary, et al., 2021; Li, et al., 2023; Loomba, edt al, 2015: Makkonen,et al., 2008)。
肝機能障害の様々なタイプごとに、GWASによる遺伝研究が進められています。たとえば代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH; Metabolic dysfunction-Associated Steato Hepatitis)(2023年の国際肝臓学会で用語が改訂されるまでは、非アルコール性脂肪肝炎(NASH; Non-Alcoholic Steato Hepatitis)については、GWASによってNASHやNASH由来の肝細胞がん発症に関連する遺伝子変異(例:PNPLA3など)が明らかとなり、これをもとに将来の発症リスクを推定するモデルが構築されています。このモデルは、発症予防や先制医療の実現に貢献すると期待されています(Kawaguchi et al.)。
薬剤性肝障害(DILI)については、150種以上の薬剤で肝障害(DILI)を発症した人のゲノムデータを用いたGWASから、ポリジェニック・リスクスコア(PRS)がDILIの感受性を高精度で層別化できることが示されました。これは薬剤開発や臨床試験のリスク管理、個別化医療に役立つ成果です(Koido, 2020)。
B型やC型肝炎の慢性化や肝がん発症についても、特定のSNP(例:HLA領域の遺伝子)が発症や治療効果に影響していることが、以前から数多くの研究で明らかにされています(茶山ら、2013)。遺伝的リスク評価研究も進展しています(たとえばNishida et al., 2023)。
このように研究が活発に行われており、古典的治療(抗ウイルス薬、強力な生活指導など)はもちろんのこと、最近では腸内フローラ(腸内細菌叢)のバランスを整える治療法である糞便微生物移植療法(FMT)や新規分子標的薬、再生医療などのユニークな処方が続々と提案されています。ご自身や家族の健康のために、医療現場での個別アドバイスを活用しましょう。
- Choudhary, N. S., Duseja, A. (2021). Genetic and epigenetic disease modifiers: Non-alcoholic fatty liver disease twin studies. Translational Gastroenterology and Hepatology, 6, 28. https://doi.org/10.21037/tgh-20-329
- Kawaguchi et al. (2018) Risk estimation model for nonalcoholic fatty liver disease in the Japanese using multiple genetic markers. PLoS One. 31;13(1): e0185490. doi: 10.1371/journal.pone.0185490.
- Koido, M., et al (2020) Polygenic architecture informs potential vulnerability to drug-induced liver injury. Nature Medicine volume 26, pages1541?1548
- Li, J., Wang, J., Li, R., Wang, R., Lin, H., Shi, Y., ... & Wang, Y. (2023). Genetic and environmental influences on serum alanine aminotransferase level: A Chinese twin study. Twin Research and Human Genetics, 26(2), 105?110. https://doi.org/10.1017/thg.2023.4
- Loomba, R., Schork, N., Chen, C. H., Bettencourt, R., Bhatt, A., Ang, B., ... & Sirlin, C. (2015). Heritability of hepatic fibrosis and steatosis based on a prospective twin study. Gastroenterology, 149(7), 1784?1793.e1. https://doi.org/10.1053/j.gastro. 2015.09.011
- Makkonen, J., Pietil?inen, K. H., Rissanen, A., Kaprio, J., & Yki-J?rvinen, H. (2009). Genetic factors contribute to variation in serum alanine aminotransferase activity in healthy twins. Journal of Hepatology, 50(5), 1035?1040. https://doi.org/10.1016/ j.jhep.2008.12.028
- Nishida, N., Ohashi, J., Suda, G., Chiyoda, T., Tamaki, N., Tomiyama, T., Ogasawara, S., Sugiyama, M., Kawai, Y., Khor, S. S., Nagasaki, M., Fujimoto, A., Tsuchiura, T., Ishikawa, M., Matsuda, K., Yano, H., Yoshizumi, T., Izumi, N., Hasegawa, K., Sakamoto, N., Mizokami, M., & Tokunaga, K. (2023). Prediction Model with HLA-A33:03 Reveals Number of Days to Develop Liver Cancer from Blood Test.* International Journal of Molecular Sciences, 24(5), 4761. https://doi.org/10.3390/ijms24054761
- 茶山一彰, 越智秀典, & 三木大樹. (2013). 肝疾患の疾患関連遺伝子 ― GWASを含めた最近の知見から ―. 日本消化器病学会雑誌, 110(9), 1577?1590.
慶應義塾大学名誉教授 安藤寿康
PGSについて
デンマーク第2の都市オーフスにあるオーフス大学を中心とする研究チームは、英国在住の約39万人の個人データを用いて、ゲノム配列情報から245種類の臨床検査値の遺伝的素因を予測するモデルを開発しました。学習データには欧州系の祖先を持つ参加者のみを用い、これらのモデルが他の祖先的背景を持つ人々の検査値をどの程度予測できるかが検証されました。肝機能指標であるAST、ALT、γ-GTPおよび腎機能指標であるクレアチニンに関しては、学習データと祖先背景が一致する欧州系集団において最も高い予測精度を示しましたが、アジア系集団においても比較的高い精度で予測可能であることが明らかになりました。これらのモデルにおいて用いられたゲノム多型の数は、ASTが約3.3万カ所、ALTが約77.4万カ所、γ-GTPが約7.6万カ所、クレアチニンが約7.7万カ所でした。
Privé F et al., Am J Hum Genet; doi: 10.1016/j.ajhg.2021.11.008.
八谷剛史
