静脈血栓塞栓症
venous-thromboembolism
下肢や骨盤の深部静脈の流れが停滞すると血栓ができることがあります。その血栓が心臓に送られ、その後に肺の血管につまると重篤な状態になることがあります。このような病気が静脈血栓塞栓症です。足を長時間動かさない状態、肥満、妊娠、経口避妊薬、脱水などが危険因子となります。また遺伝性の静脈血栓塞栓症も存在します。深部静脈の血栓の症状は下肢のむくみや痛みなどですが、血栓が遊離して肺につまると(肺塞栓症)、呼吸困難、胸痛などが出現します。場合によってはショ ック、意識喪失といった重篤な状態になります。診断には静脈の超音波検査や造影CTなどが行われます。薬物治療として抗凝固療法と、血栓溶解療法があります。下大静脈にフィルターを挿入することもあります。肺塞栓症を起こさなければ予後は良好です。長時間の座位や臥床、肥満、脱水を避けることや、弾性ストッキングの装着が予防につながります。
体の中の血液は、心臓から動脈を通って各所に運ばれ、静脈を介して心臓に戻るという循環を行っています。静脈中の血液は動脈中の血液に比べて流れる速度は遅いのですが、普通は静脈の中で血液が固まる(凝固する)ことはありません。しかしながら、同じ姿勢を長く保つなど、静脈の流れが特に遅くなる状態では血管内で血液が凝固することがあります。下肢や骨盤にある深部静脈という部分に大きな血栓が生じ(深部静脈血栓症)、それが心臓に送られ、その後に肺の血管につまると(肺塞栓症)、生命に危機を起こすことがあります。深部静脈血栓症と肺塞栓症は一連の疾患なので、あわせて静脈血栓塞栓症と呼称されています。静脈血栓塞栓症は、日本人には少なく欧米人に多いとされてきましたが、最近日本人での発症頻度が高くなっており、発症頻度は人口100万人あたり30~60名程度と報告されています(米国では100万人あたり500人程度)。

東京大学名誉教授 山下直秀
