膵がん
pancreatic-cancer
膵がんの多くは膵臓の消化酵素を産生する細胞(外分泌細胞)から発生しますが、早期に発見することが困難で一般的に予後はよくありません。膵がんリスクとして喫煙、肥満、遺伝要因などが提唱されています。膵がんには特徴的な症状がありません。また初期には自覚症状がないことが多く、進行すると上腹部痛、背部痛、食欲不振、体重減少、黄疸などが出現します。一部の患者さん、特に高齢者で、糖尿病の発症、あるいは悪化を契機として膵がんが発見されることがあります。診断のためにCT、MRI、PETなどの画像検査や血液の腫瘍マーカーの測定などが行われます。治療は病気の進行度によって手術や化学療法が選択されます。膵がんは手術をしても再発することが多く、膵がん全体での5年生存率は10~20%程度と、予後は不良です。有効な予防法は確立されていませんが、アルコールやコーヒーの過度の摂取の制限、肥満の改善、禁煙が提唱されています。
膵臓は膵液を産生する臓器で、膵液は膵管を通って十二指腸に出されます。膵液にはタンパク質を分解するトリプシン、キモトリプシン、炭水化物を分解するアミラーゼ、脂肪を分解するリパーゼといった消化酵素が含まれています。これらの酵素は膵臓の外分泌細胞とよばれる細胞で作られます。また膵臓にはランゲルハンス島という器官があり、ここからはインスリンやグルカゴンといった糖の代謝に重要なホルモンが産生されます。これらのホルモンを産生する細胞は膵臓の内分泌細胞に属します。膵がんの90%以上は外分泌細胞、特に膵管を形成する内側の細胞から発生します(膵管がん)。狭義での膵がんはこの膵管を形成する細胞を起源とするものを指します。内分泌細胞から発生するがんは多くの場合インスリンやグルカゴンなどのホルモンを産生します。膵がんは早期に発見することが困難で予後が悪いがんの代表です。膵がんの日本のがんにおける死因としては、男性では第4位、女性では第3位(2021年人口動態統計)です 。

東京大学名誉教授 山下直秀
