代謝機能障害関連脂肪性肝疾患
masld
アルコールを飲まない人が罹患する脂肪肝の中で、診断基準を満たしたものが代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)です。その中で、肝硬変、肝がんへと進行するものが代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)ですが、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)を持つ人の約10%の人が発症します。発症には遺伝要因も想定されています。代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)は無症状ですが、肝臓以外にも影響が及ぶので、それに伴う症状が出現します。代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)の初期は無症状ですが、進行すると倦怠感、黄疸、腹部膨満、腹水などの症状が出現します。診断には肝臓の組織の一部を採取して行う病理学的検査が必要です。血液検査では肝酵素の上昇、血小板の減少、ヒアルロン酸などの線維化マーカーの上昇、フェリチンの上昇などが認められます。代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)では食事、運動療法が治療の基本ですが、代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)では薬物療法が行われることもあります。代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)になると、約半数が進行性となり、5から10年で5%?20%が肝硬変に移行するとされています。予防には適切なエネルギー摂取と運動が重要です。
肝臓に中性脂肪が過剰に沈着した状態を脂肪肝とよびます。その中でもアルコールを飲まない人(エタノールに換算して男性で1日30g以下、女性で1日20g以下)におきるもので一定の基準を満たしたものが、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(略称MASLD、マッスルド)(旧名:非アルコール性脂肪性肝疾患、略称NAFLD)です。脂肪肝は肝炎にも肝硬変にもならないとこれまで考えられていましたが、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)の一部で肝炎、肝硬変、肝がんと進行する人がいることが明らかになってきました(代謝機能障害関連脂肪肝炎、略称MASH、マッシュ)。日本では約1,000万~2,000万人の代謝機能障害関連脂肪性肝疾患患者(MASLD)が存在し、代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)患者は100?200万人程度存在すると想定されています。米国における人口の3?5%という頻度に比べると少ないのですが、日本でも現在糖尿病や肥満症といった生活習慣病の増加とともに頻度が高くなっています。

東京大学名誉教授 山下直秀
