BMI
BMIは、体重と身長から計算する体格の指標です。全身にどれくらい脂肪が蓄積しているかを大まかに把握するために使われ、健診では必ず算出されます。筋肉量が多い方では実態より高く出ることがあるため、腹囲とあわせて見ることが大切です。数値が高い場合だけでなく、低すぎる場合にも注意すべき点があり、目標とする範囲は年齢によって異なります。
疾患との関連
BMIの高値は身長に対する体重の増加を意味し、全身の脂肪蓄積を表します。腹囲の高値は皮下脂肪以上に内臓脂肪の蓄積を示唆します。BMI25未満、腹囲男性85cm未満、女性90cm未満が最も合併症が少ないとされ、それを超えると、糖尿病、脂質異常症、高血圧や睡眠時無呼吸症候群の合併が増加し、脳心血管疾患(心筋梗塞・狭心症や脳梗塞)や心不全、腎機能低下につながります。
望ましい生活習慣
BMIを25以下にする体重管理が重要です。運動による消費カロリーが食事による摂取カロリーを超えるよう、運動も食事も自身が継続できることを選択することが重要です。運動としては1日30分以上毎日(少なくとも週3回以上)、有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、サイクリングなど)が勧められます。食事としてはカロリーの適正化(標準体重×25kcal)と適切なPFCバランス(炭水化物50-65%、タンパク質13-20%、脂質20-30%)が薦められます。
増田大作 Daisaku Masuda, MD, PhD 地方独立行政法人りんくう総合医療センター 循環器内科 部長 兼 先進医療開発センター センター長
コラム
下半身のふくらみが気になって、水着やボディラインがくっきり出る服を着れない、お風呂屋さんで自分よりおなかの出ている人を見てちょっと安心する人が少なからずいるのではないかと思います(いずれも私自身がそうなのですが)。下半身のふくらみ具合=体脂肪の量、それが大きすぎるのは、見てくれの悪さだけでなく、メタボの危険信号と思いながら、この遺伝子検査サービスの結果をご覧になっている方もいらっしゃることでしょう。
ちょっと待ってください。同じ下半身のふくらみも、おなか回りが大きいタイプと、お尻の周りが大きいタイプでは、意味が違います。ご存じの方も多いかもしれませんが、お尻の周り(ヒップ周囲)が大きいのは、俗に「なし型」などとよばれ、基本的に体脂肪の中でも皮下脂肪が大きいタイプです。しかし健康に特に問題となるのは皮下脂肪ではなく内臓脂肪の量です。これがおなか回り、つまり腹囲に表れ、「リンゴ型」と呼ばれる体型になってゆきます。
内臓脂肪が多すぎると、心血管疾患、2型糖尿病、高血圧、ガン、脂質異常症(高中性脂肪、低HDLコレステロール)などの疾患にかかりやすくなることが知られています。特に血圧・血糖・脂質の三つの症状のうち、二つをあわせもつとメタボリック・シンドロームとよばれ、警戒度が高まります。
それにしてもPOSRIではすでにBMIを肥満の指標として扱いました。この上さらになぜ腹囲(それとヒップ周囲)のような別の指標を持ち出さなければならないのでしょうか。それは特に腹囲がBMI以上に、さまざまな健康指標のバロメータとしてすぐれているからなのです。BMIは体重/身長^2の式があらわしているように、体重の全体量が関心の対象になっており、体のどの部位に重みがあるかを表していません。先に述べたさまざまな疾患とかかわりが深いのは、特に内臓脂肪の量で、それを最もよく表しているのが腹囲なのです。
腹囲も、やはりその人の体大きさ全体を勘案したほうがより指標として正確ですので、身長で調整(腹囲身長比)したりBMIで調整(腹囲補正BMI)した指標が使われることもあります。さらに良く用いられるのがヒップ周囲による調整で、それがウェスト/ヒップ比(WHR)ですが、これについてはヒップ周囲の項で取り上げましょう。
さて腹囲や、それが指し示す内臓脂肪にも遺伝的な個人差がかなり反映されていることが双生児研究から明らかにされています。腹囲の遺伝率は若い時(8~11歳)に77%(1)、成人になると83%(2)と、かなり高い数値が報告されています。最近の分子遺伝学的な研究では、腹囲に関わる多数の遺伝的変異(SNP=一塩基多型)が具体的に特定され、遺伝子検査の結果を出すときの遺伝素因得点(PGS)の計算に用いられています(3)。またある研究では、具体的にSEC16Bという遺伝子の中にあるrs574367というSNPが腹囲と関連することが報告されています(4)。これは韓国のデータですので、日本人についても参考になる結果です。この研究ではほかにも食欲、エネルギー消費、体重調節に関わり、肥満と2型糖尿病のほか心血管疾患のリスクも高める変異が知られているMC4R、同じく食欲中枢の管理や体重調整に作用するといわれるTMEM18、2型糖尿病に関連するCDKAL1などの肥満関連遺伝子が報告されています。
遺伝率が100%でない以上、環境によっても変わることを意味します。環境要因として真っ先に挙げられるのは、食事、アルコールや喫煙、運動といった生活習慣に関わる環境です。それは家庭環境によると考えがちです。日頃から油っぽいものを食べるような家庭で育ち、生活すれば、肥満になってしまうことは容易に想像されますね。
ところが双生児研究(一卵性双生児は100%同じ遺伝子を持ち、二卵性双生児は普通の兄弟姉妹と同じく約50%の遺伝子を共有しているという特性を利用して、遺伝と環境の影響を理解するための研究)から明らかにされたことは、その環境の由来が家庭ではないということでした。もし家庭環境が関わっているとしたら、家庭環境を共有する二卵性双生児も、一卵性双生児なみに、とは言わないまでも、遺伝だけで説明される以上に類似するはずです。ところが実際はそうならず、一卵性双生児の類似度(相関係数)は二卵性の類似度のほぼ二倍、つまりその類似性はほとんどもっぱら双生児の共有する遺伝要因だけで説明され、共有環境の影響は入ってこないことが示されました。これは腹囲に限らず、身体の大きさに関わるおよそすべての指標(身長、体重、腕・腿など様々な部位の皮下脂肪や腿・ふくらはぎ、そしてヒップ周囲など)について示された頑健な結果でした。
それでも環境は影響します。それは家庭の中で家族全員に同じように影響を及ぼす共有環境にあるのではなく、あなた自身が独自に作り出す非共有環境です。そこに食生活や嗜好品、運動が関わってくるのです。ただ家族が同じように脂質の多い食べ物が好きで、みんながそれを食べる傾向があるとすると、それは家庭環境の影響に見えますが、これはやはり遺伝の影響に含まれます。しかしたとえばPOSRIのようなモバイルサービスを手がかりに、あなた自身の努力で食べものや運動を心がければ、それはあなた独自の非共有環境として、効果を表します。BMIの項でも紹介したモバイル介入の調査では、3か月から約1年で腹囲を5.77 cm減らせたと報告されています。これには個人差がありますが、ダイエットが腹囲を減らすこと、そしてそれによって健康度を高めることは、あなた自身の環境を変えることで、必ず実現できる根拠はこれです。
これと関連して腹囲と健康に関連する気になる研究がありました。これはヨーロッパ系の人たちを対象としたものですが、幼少期の逆境体験(例えば、経済的困窮、虐待、ネグレクトなど)が多いほど、腹囲に及ぼすPRSの影響が増大するというものです(5,6)。これは、一般に「素因ストレスモデル(diathesis-stress model)」 と呼ばれる現象で、特定の遺伝的な素因を持つ人が、環境的なストレスにさらされると、その遺伝的素因がより強く発現する傾向のことで、うつや反社会的行動などでもそれを示唆する報告があります。環境は、このような形で長期的な遺伝的素質の出方に影響を与えますので、貧困や親のメンタルヘルスを軽減する社会的なとりくみも、結果的に腹囲と内臓脂肪といった身体的健康に重要な意味を持ってくるのです。もしあなたの幼少期にそんな経験をお持ちだとしたら(それ自体、思い出したくないつらい思い出だと思いますが)、いまこそ前を向いて明るい気持ちでダイエットに励んでみてください。影響が一番強く出るのは、過去の環境ではなく「いま、ここ」の環境であることも、遺伝学は明らかにしてくれています。
- (1) Wardle, J. et al. (2008) Evidence for a strong genetic influence on childhood adiposity despite the force of the obesogenic environment. Am JClin Nutr. ;87:398?404.
- (2) ilventoinen, K., et al. (2023) Genetic regulation of body size and morphology in children: a twin study of 22 anthropometric traits. International Journal of Obesity, 47:181?189; https://doi.org/10.1038/s41366-023-01253-0.
- (3) Tanigawa Y et al., American Journal of Human Genetics; doi: 10.1016/j.ajhg. 2023.09.013
- (4) Jo J, et al. (2024) Genetic determinants of obesity in Korean populations: exploring genome-wide associations and polygenic risk scores. Brief Bioinform. 25(5):bbae389. doi: 10.1093/bib/bbae389.
- (5) Cuevas AG, Mann FD, Krueger RF. (2022) The weight of childhood adversity: evidence that childhood adversity moderates the impact of genetic risk on waist circumference in adulthood. Int J Obes ;46(10):1875-1882. doi: 10.1038/s41366-022-01191-3.
- (6) Cuevas AG, Mann FD, Krueger RF. (2023) Discrimination Exposure and Polygenic Risk for Obesity in Adulthood: Testing Gene-Environment Correlations and Interactions. Lifestyle Genom. 2023;16(1):90-97. doi: 10.1159/000529527.
慶應義塾大学名誉教授 安藤寿康
PGSについて
マサチューセッツ工科大学を中心とする研究チームは、英国在住の約32万人の個人データを用いて、ゲノム配列情報から60種類の検査値の遺伝的素因を予測するモデルを開発しました。学習データの大多数は欧州系の祖先を持つ参加者でしたが、アフリカ系やアジア系、さらには多様な祖先的背景を持つ混合個体(*1)も含まれていました。研究チームは、こうした祖先の多様性を反映するよう設計された手法を用い、約3.6万か所のゲノム多型に基づくBMI予測モデルと、約3.1万か所のゲノム多型に基づく腹囲予測モデルを構築しました。これらのモデルは、多様な人々に対して従来法よりも高い精度で肥満の遺伝的素因を予測できることが示されました。
*1 混合個体:複数の異なる祖先集団(例:アフリカ系、欧州系、アジア系など)から遺伝的背景を受け継いだ人々のことを指す、主に遺伝学や集団遺伝学の分野で用いられる専門用語である。たとえば、両親のうち片方がアフリカ系、もう片方が欧州系であるような人は典型的な混合個体といえる。また、ラテンアメリカの住民に多く見られるように、長い歴史の中で複数の民族集団が混血を繰り返してきた地域では、個人が複数世代にわたって複雑な祖先構成を持つことも多い。
Tanigawa Y et al., Am J Hum Genet; doi: 10.1016/j.ajhg.2023.09.013.
八谷剛史
